特定技能と技能実習の違いを一言で説明すると目的が違います。
この特定技能制度と技能実習制度の違いについて入管(出入国在留管理庁)は、次のように説明しています。(下線は筆者による)
特定技能制度は,深刻な人手不足に対応するため,特定の産業上の分野において,一定の専門性・技能を有し,即戦力となる外国人材を受け入れるものです。他方,技能実習制度は,人材育成を通じた開発途上地域等への技能,技術又は知識の移転を図り,国際協力を推進することを目的とする制度です。このように,両制度は,趣旨が異なる制度です。
出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」より
http://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf
このように特定技能は企業のためであるのに対し技能実習は外国人のためですが、どちらもwin-winの関係にあります。
たとえ「国際協力を推進する」ためでなく、人材不足を補うために技能実習制度を活用しているとしても、それぞれの制度を活用する前にこの目的をしっかりと理解しておくことは大切です。
今回は技能実習と特定技能をそれぞれ比較しながら、違いについて紹介します。
それぞれのメリットやデメリットについても詳しく解説しますので、この記事を読めばあなたの企業にとってどちらの制度がいいのかがはっきりわかるようになります。
ぜひ最後までお読みください。
技能実習と特定技能の違い
まず法務省が、技能実習と特定技能の制度の違いを表にしていますので紹介します。

引用元:法務省「技能実習と特定技能制度比較(概要)」よりhttp://www.moj.go.jp/content/001331344.pdf
ここでは技能実習と特定技能それぞれの違いについてをさらに詳しく具体的に解説します。それぞれの目的の違いがどう関係するかに注目してみてください。
技能実習と特定技能の違い(1)職種
2021年1月8日時点で、技能実習制度の対応職種は83職種151作業ありますが、特定技能制度は14業種です。
特定技能制度の1業種の中には、技能実習制度の複職種が含まれていることもありますが、以下の図のように技能実習制度にはあって特定技能制度にはない職種がいくつかあります。(塗りつぶされている部分が、特定技能に対応していない職種です)
例えば「農業関係」や「食品製造関連」は全て対応していますが、建設関係の一部、繊維・衣服関係に至っては全く対応していません。
このように技能実習に対応していて特定技能に対応していない職種は多くありますが、特定技能制度に対応していて技能実習制度に対応していないのは、今のところ航空業の「航空機整備業務」などごくわずかしかありません。
ただ特定技能制度は出来たばかりなので、「コンビニ業務」など今後対応職種が増えていくことが予想されています。
技能実習と特定技能の違い(2)作業内容
作業内容は職種にもよりますが、技能実習は「国際推進の協力」が目的なので基本的には専門性の高い作業のみ従事することができますが、単純作業はできません。
一方技能実習制度は、「深刻な人手不足に対応する」のが目的ですので、日本人から人気のない単純作業を含む幅広い業務も行うことができます。
技能実習と特定技能の違い(3)在留期間と家族滞在の可否
技能実習制度の在留期間は1号が1年、2号が2年(計3年)、3号が2年(計5年)となっていますが、特定技能制度の在留期間は1号が5年、2号が無期限となっています。
家族の妻帯は特定技能2号に限り可能となっていますが、技能実施制度、あるいは特定技能1号は原則禁止となっています。
技能実習と特定技能の違い(4)転職の可否
技能実習制度は技能を実習することが目的なので、基本的に転職は認められていません。
ただし2号から3号へ以降の場合一度祖国に帰国することになりますが、その時以前日本で働いていた時と違う職場でも働くことができます。
一方特定技能は同一職種であれば基本的に転職が可能であるというのが、技能実習との大きな違いです。
技能実習と特定技能の違い(5)受け入れ人数枠
技能実習は人材育成を目的としていますので、受け入れの人数制限があり、それは指導員の数などの要素によって上下します。
一方特定技能は人手不足を補うことが目的ですので、受け入れ人数に制限はありません。ただし介護分野と建設分野には受け入れ人数の制限がありますので注意が必要です。
技能実習と特定技能の違い(6)技能水準や日本語レベル
技能実習は人材育成を目的としていますので、基本的には技能水準も日本語レベルも求められていません(介護に限りN4相当の日本語レベルが必要)。
一方特定技能は「一定の専門性・技能を有し,即戦力となる外国人材を受け入れる」ことになっていますので、関係する技能試験に合格していることや、N4相当の日本語レベルが必要です。
技能実習2号を修了してから特定技能に移行している場合も多く、この場合はすでに日本で3年ほど実習していますので、日本語レベルも高く日本の仕事にも慣れています。
特定技能と技能実習のメリット・デメリット
特定技能制度にも技能実習制度にも、それぞれメリット・デメリットがあります。
|
技能実習 |
特定技能 |
メリット |
・人材を確保しやすい
・特定技能に移行できる
・給料を安く抑えられる |
・介護、建設以外受入れ人数に制限がない
・受入れ後の事務作業が複雑ではない
・即戦力となる |
デメリット |
・受け入れ後の事務作業が複雑
・単純作業などできない作業がある
・受け入れ人数に制限がある |
・転職される可能性がある
・人材の確保が難しい
・日本人と同等以上の給料を支払わなければならない |
このように技能実習のメリットはとにかく人材の確保がしやすいことと支出を抑えられること、一方特定技能のメリットは自由度が高いというところにあります。
技能実習から特定技能1号へ移行するのがおすすめ

技能実習か特定技能にするかまだ迷っているなら、とりあえず技能実習制度から活用してみましょう。
上記の図のように技能実習は3年がたち技能実習1号2号が修了すると、「技能実習3号に移行する」か「特定技能1号に移行する」かを選ぶことができますので、10年間雇うことも可能だからです。
まとめ
今回は技能実習制度と特定技能制度の違いについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
最後にそれぞれを表にしてみました。

特定技能は送り出し機関や監理団体(組合)を通さずに直接雇用が基本ですが、手続きなどが複雑なので今の所送り出し機関がサポートをする場合がほとんどです。
SMM(シェエマンダラーメイサービス株式会社)は「技能実習」も「特定技能」もどちらもお手伝いできますので、まずは気軽に「お問合せフォーム」にてお問い合わせください。